課題分析 39.三菱ケミカルホールディングス

第53回宣伝会議賞課題分析シリーズ、第39回は・・・

 

39.三菱ケミカルホールディングス
三菱ケミカルホールディングスの可能性を伝えるアイデア

 

過去の出題との大きな違いは、"KAITEKI"という文言が消えたこと。
出題企業としては、"KAITEKI"縛りでは難しいと判断したかも。

で、今回の課題と"KAITEKI"の関係ですが・・・。
そもそも、"THE KAITEKI COMPANY"という企業タグラインがある以上、
"KAITEKI"の認知度が低いままでは対外的には困るはずなのです。
それに、出題企業にとっての「持続可能性」って、要は"KAITEKI"でしょ。
ですから、"KAITEKI"というビジョンに沿ったものが求められるはず。
(過去のSKAT掲載作品には、ただの「エコ」も多いような・・・。)
「出題企業→"KAITEKI"らしさ」の「→」を作る課題と言えるでしょう。

 

ただ、過去の課題よりは取り組みやすくなっているとは思います。
"KAITEKI"にどこかつながっていれば、前面に押し出す必要はないので。
前回までは、"KAITEKI"そのものを広めるような趣旨の課題でしたが、
これだといろいろとややこしい感じが私にはしていたのですよ・・・。
まず、"KAITEKI"が広まった状態がどういう状態か、イメージしにくい。
ことば自体が流通すること?一般消費者の生活態度の変化?
また、出題企業の企業姿勢を伝えるために"KAITEKI"があって、
さらにその"KAITEKI"を伝えるためのキャッチフレーズって、複雑。
過去の課題の難しさの一因は、その辺りにもあったかも。

 

さて、企業ウェブサイトを見ると、情報は充実しています。
また、小林喜光会長の著書も出ています。

『KAITEKI化学』(阪急コミュニケーションズ)

というわけで、説明は十分すぎるほどになされている。
あとは、どうやって伝わりやすくするか、流通力を上げるかでは。
元々ちょっと複雑な印象ですから、妙なひねりを加えるのは逆効果。
ぱっとイメージがわくもの、語感にマッチした親しみやすいものが欲しい。
コピーライティング的発想による開拓の余地は大きいと思います。

 

が、実際に取り組んでみると、かなり難しい・・・。
まず例によって、「幹」か「枝」かで考えてみると・・・。

「幹」の場合は、「総合化学企業グループ」ですから、
一般的に化学の力の可能性を訴えるのでしょうが、
抽象的になりすぎて、説得力にもチャームにも欠けがち

「枝」の場合は、何か具体的な事実に基づくものを考えるとして・・・。
ただ、「32.野村ホールディングス」の課題分析でも書きましたが、
こういう場合は、むしろボディーとビジュアルを先に考えたいような・・・
どうしても、近畿大学「マグロ」や「ぶっ壊す」が思い浮かびます。
キャッチ単独では考えるのも評価するのも難しそうです。

 

なお、企業ウェブサイトで新聞広告とテレビCMを見ることができます。
テレビCMは、応募期間中に見たものは別バージョンだったような。
この方向性で何本かシリーズで作られているのかも。

http://www.mitsubishichem-hd.co.jp/special/

正直に言えば、私はこれがそんなにいい広告には思えないのです。
これを見て、「化学の力」が印象に残る人がどれだけいるのか・・・?
つまり、この課題はプロが作っても難しいんじゃないかってこと。

 

強いて言うならば、そのこと自体がヒントなのかもしれません。
この課題では特に、「正しいこと」を言い当てるよりも、
閉塞感を打破することを優先してみた方が価値が高いのでは。

 

明日は、40.村上農園。
「キャッチで」何をするべきか。